文學界5月号 文藝春秋 2020年4月
「綿矢りさ×朝吹真理子×村田沙耶香」という並びの鼎談よみたさに購入した文學界5月号。コロナの影響で書店が閉まってしまったけれど、文學界5月号は滑り込みで購入できた。これがもう鼎談はもちろん、新人賞作品やその選評も面白かったので、記録。
「綿矢りさ×朝吹真理子×村田沙耶香」という並びの鼎談よみたさに購入した文學界5月号。コロナの影響で書店が閉まってしまったけれど、文學界5月号は滑り込みで購入できた。これがもう鼎談はもちろん、新人賞作品やその選評も面白かったので、記録。
仲良さげな鼎談にほっこり
綿矢りさ×朝吹真理子×村田沙耶香の鼎談は、好きな作家たちが好きな話をしていることのありがたさを感じながら楽しんだ(収録は2月6日)。コロナ禍でコロナの話をしていない人を探すというのも難しい状況になってきたので、純度高めのオアシスのようで、大変満足。ほっこり。笑った。
ハイライト1 コスプレ
コスプレ仲間だという三人がメイクレッスンにいった、という話から鼎談スタート。しかし、村田さん「Amazonでなまはげセットを買ったらお面がついてきて……」ということで、メイクの必要のない対象を選択してしまう。
ちなみにペニーワイズになった綿矢さんと、安倍晴明になった朝吹さんの写真も掲載されている。キャプションがお二人の名前じゃなく「ペニーワイズ」「安倍晴明」っていうのも個人的につぼ。
ハイライト2 印刷機
村田さんの印刷するのが好きという話から、綿矢さんの印刷機の話に。
綿矢 そうだねー。印刷って、そんなに簡単にパッパッてできる感じなん? うちのはFAXがついてるプリンターなんだけど、一枚印刷するのに結構な時間がかかって。専用のプリンター買ったほうがいい?
村田 今は安くていいやつがあるよ。
朝吹 ポータブルで、なんなら出張に持って行けるっていうのもあるよ。
この会話もテンポが良くて好きなのだけれど、この後に続く、擬音語で互いの印刷機の性能を説明するくだりが、とてもよかった。
面白いところだけつまんだが、編集者との関係や、主人公と自分との関係などは、興味深く読めた。この三人が好きな方は必読。
新人賞「アキちゃん」三木三奈
わたしはアキちゃんが嫌いだった。大嫌いだった。当時は大嫌いという言葉ではおさまりきらないものがあった。それは憎しみにちかかったかもしれない。いや、ほとんど憎しみだった。わたしはアキちゃんを憎んでいた。
という文章から始まる第125回文學界新人賞受賞作品の「アキちゃん」。最後の最後まで、主人公がアキちゃんという人間をひたすら憎んでいる。作品全体に流れるリズムがとてもよかったのと、人物たちの持つ特徴や、動作を示す描写が面白かった。
選評では、解釈が分かれ議論に発展したらしい。ネタバレになるので詳しくは書けないけど、個人の恨みは社会的なアレコレとは全く離れたところに存在する。というのはわかっていても、実際に、社会的なアレコレを気にせずに恨みだけで書ききるというのは素人には難しいことなのだろう。この作品には、アキちゃんを恨んでいた主人公と、主人公を恨ませたアキちゃんだけが描かれているように感じた。次回作が楽しみである。
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