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純粋でいられたら | 村田沙耶香「ぼくの ポーポが こいを した」

村田沙耶香 作/米増由香 絵/瀧井朝世 編「ぼくの ポーポが こいを した」岩崎書店 2020年4月 初版
 ぬいぐるみのポーポと、ぼくのおばあちゃんが結婚する。「きもちわるいよ」そう言われるおばあちゃんの心は、純粋な気持ちで溢れていた。
 およそ30ページの絵本でも、著者・村田沙耶香さんの色はちっとも薄まることなく、むしろ凝縮されているようにも感じる。米増さんの描く迫力のある絵とともに、恋の尊さを優しく教えてくれる一冊。




おばあちゃんの恋は誰のもの

 にちようび ぼくの おばちゃんが、 ぼくの ぬいぐるみの ポーポと けっこんする。
「ぼく」のおあばちゃんは「ぼく」のぬいぐるみのポーポと夜な夜なキスをする仲である。晴れて結婚する運びとなったが、「ぼく」は反対だ。
 「ぼく」は、おばあちゃんは人間で、ポーポはぬいぐるみだから、ぜったいに変だということを主張する。ここで、登場するのが「ミカおかあさん」と「ユカおかあさん」だ。「ぼく」には二人のお母さんがいる。しかし、二人のお母さんはポーポとおばあちゃんの結婚に大賛成で、準備を進めていく。反対しないの? と聞く「ぼく」に、二人のお母さんはこう答える。
 「しないよ。わたしたち、ママの みかたよ」
「そうよ。おばあちゃんの こいは、おばあちゃんの ものだもの」
ポーポにも相手にされなくなり寂しさを募らせ、おばあちゃんには「きもちわるいよ」と言ってしまった「ぼく」。そんな「ぼく」も、おばあちゃんの姿をみて気持ちを変えていく……。

 ちなみにおばあちゃんが結婚式に来たドレスの色は、オーソドックスなものではなかったので大変驚いた。何色のドレスを着たか、村田沙耶香さんのファンならもしかしたら当てられるかもしれない。是非、想像してから本書で確かめてほしい。

純粋と狂気

 パラパラとこの絵本を開いた時に、私が初めて見たのは、細かな模様で埋め尽くされたページだった。うわっと驚いたのを覚えている。「狂気じみた細かさ」を感じたのである。しかし、よく見てみると、線からはみ出ている部分や、色にムラがある部分もあり、大変不規則で雑っぽい。しかし、その雑さが、なぜだか温もりを感じさせた。

 優しさと狂気の両方を感じられる絵。村田沙耶香さんの作品にもそういうところがあるので、とても素晴らしいコンビだなぁと感じた。
 純粋さというのは時に狂気に感じられるものかもしれないが、村田沙耶香作品を知ってしまうと、狂気というのはとても尊い状態を指すのではないかと思えてくるから不思議だ。きっと誰もが狂気的(と揶揄されるよう)な部分を持っていて、大人になるにつれて閉じ込めていくのだと思う。自分を曲げた分だけきっと何かを閉じ込めて、いつの間にか閉じ込めたことさえ思い出せなくなっている。

 この作品は、あなたが蓋をした純粋な気持ちを呼び起こしてくれる。そして読後には、「こんなに純粋な作品を40代で書ける村田沙耶香って」と彼女の純粋さに感動し、喪失してしまった自分の純粋さに想いを馳せ、おセンチになるだろう。
『ぼくの ポーポが こいを した』
 村田沙耶香





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